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鈴木敏泰(助教授) 分子研リポート1999 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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196 研究系及び研究施設の現状

鈴 木 敏 泰(助教授)

A -1)専門領域:有機合成化学

A -2)研究課題:

a) アモルファス性有機電子輸送材料の開発 b) テルル原子を含有した新規有機伝導体の開発

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) 有機エレクトロルミネッセンス素子は次世代のフラットディスプレーとして注目されているが,これを構成する 電子輸送材料は選択の余地がないほどに少ない。このため我々は全フッ素置換されたフェニレンデンドリマーを 設計し,C60F42(分子量:1518)および C132F90(分子量:3295)を臭素化反応と有機銅を使ったクロスカップリン グにより合成した。p- トリフェニレンおよび p- テトラフェニレン基を含んだ2つの C60F42異性体も比較のため合 成した。これら3つの C60F42は 125-135 度でガラス転移を示し,アモルファス相が安定であることがわかった。高 真空下での昇華によりアルミニウムキノリン錯体を発光層,フッ化フェニレン化合物を電子輸送層とした有機E L 素子を作成した。すべての素子で発光が見られ,最高輝度は 24.4 Vで 2860 cd/m2であった。電気化学測定の結果 によれば,フッ化フェニレンの電子親和度が増加するとともに素子の性能が向上することがわかった。これらの 知見をもとに合成した perfluoro-p-sexyphenyl では素子の性能が劇的に改善され,最高輝度が13.7 V において12200

cd/m2に達した。

b) これまでの分子伝導体の開発では,伝導電子を発生させるために複数の分子あるいはイオン間の電荷移動現象を 用いている。したがって,金,銅,アルカリ金属等に相当する単一組成の分子性金属は未だ存在しておらず,単 一中性分子の結晶で金属状態を実現することは長い間化学者の大きな目標であった。本研究の目標は中性分子の 金属結晶の実現である。テルルはイオウやセレンに比べそのサイズが大きく,T e-T e間の強い分子間相互作用によ り,無機物と有機物の中間的な電子物性が期待される。しかしながら,テルル原子を含む有機電子ドナーはイオ ウやセレンのものに比べて少なく,テトラテルラフルバレン(T T eF )でもこれまで数種類のものが合成されたに すぎない。今回我々は,1-B enzyl-2,5-dihydropyrrole の T T eF 誘導体の合成に成功した。このものは溶液では黄緑色 で,塩化メチレンより黒色のプレート結晶を与えた。X線構造解析によれば,分子間の T e-T e の最短距離は 3.95 Åであり,T e のファンデルワールス半径の和より小さい。また,このものは電解合成により種々のアニオンと良 質の電荷移動錯体塩を作ることがわかった。

B -1) 学術論文

T. AKASAKA, T. SUZUKI, Y. MAEDA, M. ARA, T. WAKAHARA, K. KOBAYASHI, S. NAGASE, M. KAKO, Y. NAKADAIRA, M. FUJITSUKA and O. ITO, “Photochemical Bissilylation of C60 with Disilane,” J. Org. Chem. 64, 566- 569 (1999).

(2)

研究系及び研究施設の現状 197 B -3) 総説、著書

鈴木敏泰 , 「フラーレン類の合成−ヘテロフラーレン」,季刊 化学総説 44, 49-51 (1999). 鈴木敏泰 , 「フラーレン類の反応−構造特性と電子的性質」,季刊 化学総説 44, 79-84 (1999).

C ) 研究活動の課題と展望

次世代の有機電子材料として,「単一分子素子」や「ナノワイヤー」等のキーワードで表される分野に注目が集まり 始めている。S PM 技術の急速な発展により,単一分子メモリ,単一分子発光素子,単一分子ダイオード,単一分 子トランジスタなどの基礎研究が現実的なものになってきた。一個の分子に機能をもたせるためには,従来のバ ルクによる素子とは異なった分子設計が必要である。計測グループとの密接な共同研究により,この新しい分野 に合成化学者として貢献していきたい。現在行っている有機 E L 素子のための電子輸送材料開発は,単一分子素子 研究の基礎知識として役立つものと信じている。

参照

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